減圧症の原因となる体内への窒素の溶け込みに関し、誤っているものは次のうちどれか。…
高気圧障害 第28問
減圧症の原因となる体内への窒素の溶け込みに関し、誤っているものは次のうちどれか。
- (1)潜水すると、水深に応じ呼吸する空気中の窒素分圧が上昇し、肺における窒素の血液への溶解量が増す。
- (2)血液に溶解した窒素は、血液循環により体内のさまざまな組織に送られ、そこに溶け込んでいく。
- (3)溶け込む窒素の量は、潜水深度が深くなるほど、また潜水時間が長くなるほど大きくなる。
- (4)浮上に伴って呼吸する空気の窒素分圧が低下すると、組織に溶け込んでいる窒素は、溶け込みとは逆の経路で、体内外の窒素分圧が等しくなるまで体外へ排出される。
- (5)身体組織に溶け込んでいる窒素の排出が不十分な場合は、血管外の組織において気泡をつくることはないが、血管中で気泡となって閉塞を起こす。
正答 (5)
正答は (5)。これが誤りです。
窒素の気泡は、血管の中だけでなく血管外の組織にもできます。「血管外の組織において気泡をつくることはない」というのが誤りです。
窒素は血液に溶けて運ばれ、そこから各組織へ拡散して溶け込みます((2)にあるとおりです)。ということは、浮上して圧力が下がったとき、気泡ができる場所も組織の中でありえます。
実際、減圧症の症状はこの2種類の気泡に対応しています。
・血管内の気泡 … 血流を妨げる。チョークスや脳の症状
・組織内の気泡 … 周囲を圧迫する。関節の痛み(ベンズ)や皮膚の症状
関節が痛むのは血管が詰まったからではなく、関節まわりの組織にできた気泡が神経を圧迫するためです。
(1)〜(4)はいずれも正しい記述です。(3)の「深いほど、長いほど溶け込む量が増える」はヘンリーの法則の帰結で、減圧計算の土台になる考え方です。
減圧症の要点
発症の時期 多くは浮上後の比較的早い時期に起こる。
「通常は24時間以上たってから」は誤り
重症度 軽症 皮膚の痒み、大理石斑、関節の痛み(ベンズ)
重症 脳・脊髄・肺などが冒される
軽症でも治療は必要。放置してよいものではない
チョークス 血液中の気泡が肺の毛細血管を塞栓する重篤な肺減圧症
気泡の場所 血管の中だけでなく、血管外の組織にもできる。
「血管外に気泡はできない」は誤り
かかりやすい人・条件
高齢者、最近外傷を受けた人、脱水症状の人
作業量が多く血流量の増える重筋作業
規定を守っても 浮上速度や浮上停止時間を守っても発症することがある。
減圧表はあくまで確率を下げるためのもの
低圧ばく露 潜水後に航空機に乗る、高所へ移動するなどでも発症する
骨壊死 減圧症に罹患した潜水者に多くみられる慢性の障害
骨幹部に出たもの 大きな障害はみられない
骨端(骨頭)に出たもの 関節が壊れ、歩行障害などを訴える
出典:減圧症の発症機序に関する一般的な医学的知見
潜水士 2023年下半期実施分(2024年4月掲載/公益財団法人 安全衛生技術試験協会 公表試験問題)

