潜水業務における酸素中毒に関し、誤っているものは次のうちどれか。…
高気圧障害 第27問
潜水業務における酸素中毒に関し、誤っているものは次のうちどれか。
- (1)酸素中毒は、肺が冒される肺酸素中毒と、中枢神経が冒される脳酸素中毒に大別される。
- (2)肺酸素中毒は、致命的になることは通常は考えられないが、肺機能の低下をもたらし、肺活量が減少することがある。
- (3)脳酸素中毒の症状には、吐き気、めまい、痙攣けいれん発作などがあり、特に痙攣けいれん発作が潜水中に起こると、多くの場合致命的になる。
- (4)脳酸素中毒は、50kPa程度の酸素分圧の呼吸ガスを長時間呼吸したときに生じ、肺酸素中毒は、140~160kPa程度の酸素分圧の呼吸ガスを短時間呼吸したときに生じる。
- (5)炭酸ガス(二酸化炭素)中毒に罹患りすると、酸素中毒にも罹患りしやすくなる。
正答 (4)
正答は (4)。これが誤りです。脳と肺の条件が入れ替わっています。
脳酸素中毒と肺酸素中毒は、発症する条件が正反対です。
脳酸素中毒 … 140〜160kPa程度の「高い」分圧を「短時間」
肺酸素中毒 … 50kPa程度の「低い」分圧を「長時間」
この設問では、この2つを丸ごと入れ替えた選択肢が置かれています。
症状の性質から思い出すと間違えません。脳酸素中毒は痙攣発作という激しい症状が突然起こるもので、強い刺激が短時間で効いた形です。肺酸素中毒は肺活量がじわじわ落ちていくもので、弱い刺激が長く続いた結果です。
(2)(3)を見比べると、脳酸素中毒は痙攣発作で「多くの場合致命的」、肺酸素中毒は「致命的になることは通常は考えられない」とあります。この重さの違いが、分圧の高さの違いに対応しています。
(1)(2)(3)(5)はいずれも正しい記述です。
酸素中毒と二酸化炭素中毒
【酸素中毒】一般に50kPaを超える酸素分圧にばく露されると起こる
脳酸素中毒 高い酸素分圧(140〜160kPa程度)を「短時間」吸って発症
症状は吐き気、めまい、痙攣発作。
潜水中に痙攣を起こせば溺れるため、多くの場合致命的
肺酸素中毒 低めの酸素分圧(50kPa程度)を「長時間」吸って発症
肺機能が低下し肺活量が減る。通常は致命的にならない
→ 脳と肺で「分圧の高さ」と「時間の長さ」が逆。ここが毎回問われる
激しい症状の脳が「高分圧・短時間」、じわじわ効く肺が「低分圧・長時間」
予防 大深度潜水では、深度に応じて酸素濃度を「低くした」混合ガスを使う。
深いほど分圧が上がるため、濃度を下げて相殺する
【二酸化炭素中毒】
機序 換気が不足して体内に二酸化炭素がたまることで起こる。
ヘモグロビンと強く結合するのは一酸化炭素であって二酸化炭素ではない
発生 スクーバ式でも起こる。スキップ呼吸や器材の死腔が原因になる。
「スクーバでは生じない」は誤り
【両者の関係】
二酸化炭素が多いと酸素中毒は「起こりやすく」なる。
二酸化炭素には脳の血管を広げる作用があり、脳へ送られる酸素が増えるため。
「起こりにくい」は誤り
出典:酸素中毒に関する一般的な医学的知見
潜水士 2024年下半期実施分(2025年4月掲載/公益財団法人 安全衛生技術試験協会 公表試験問題)

