相殺に関する次のアからオまでの記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは,後記1から5 までのうち,どれか。…

午前の部(民法) 午前の部 第17問

相殺に関する次のアからオまでの記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは,後記1から5 までのうち,どれか。ア 時効によって債権が消滅した場合において,その消滅時効期間が経過する以前にその債権の債務者が債権者に対する反対債権を有していたときは,その消滅時効期間が経過する以前に反対債権の弁済期が現実に到来していたかどうかにかかわらず,時効によって消滅した債権の債権者は,その債権を自働債権とし,その反対債権を受働債権として,相殺をすることができる。イ 債務不履行に基づく損害賠償請求権を受働債権とする相殺は,その損害賠償請求権が人の生命又は身体の侵害によるものであっても,することができる。ウ 債権が第三者に差し押さえられた場合において,被差押債権の債務者がその差押え前に被差押債権の債権者に対する反対債権を取得しており,その差押え後にその反対債権と被差押債権が相殺に適するようになったときは,その反対債権と被差押債権の弁済期の先後にかかわらず,被差押債権の債務者は,その反対債権による相殺をもって差押債権者に対抗することができる。エ 相殺は,双方の債務の履行地が異なるときであっても,することができる。オ 債権につき,弁済期が到来していれば,その債権の債務者が同時履行の抗弁権を有していても,その債権の債権者は,その債権を自働債権として,相殺をすることができる。

正答 (4)
正答は (4)。正しいのはウとエです。 【ア】誤り 時効によって消滅した債権がその消滅以前に相殺に適するようになっていた場合には、その債権者は、相殺をすることができます(民法508条)。判例は、この「相殺に適するようになっていた」といえるためには、消滅時効期間が経過する以前に受働債権(反対債権)の弁済期が現実に到来していたことを要し、期限の利益を放棄できたというだけでは足りないとしています。弁済期の到来の有無に「かかわらず」相殺できるとする点が誤りです。 【イ】誤り 人の生命又は身体の侵害による損害賠償の債務の債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができません(民法509条2号。債権者がその債権を他人から譲り受けたときを除きます)。この制限は不法行為に基づくものに限られず、債務不履行に基づく損害賠償債務にも及びます。
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【ウ】正しい 差押えを受けた債権の第三債務者は、差押え後に取得した債権による相殺をもって差押債権者に対抗することはできませんが、差押え前に取得した債権による相殺をもって対抗することができます(民法511条1項)。反対債権と被差押債権の弁済期の先後は問われません(いわゆる無制限説を条文にしたもの)。 【エ】正しい 相殺は、双方の債務の履行地が異なるときであっても、することができます。この場合、相殺をする当事者は、相手方に対し、これによって生じた損害を賠償しなければなりません(民法507条)。 【オ】誤り 自働債権に相手方の同時履行の抗弁権が付いているときは、その債権を自働債権として相殺することはできないとされています。相殺を認めると、相手方が抗弁権を一方的に奪われることになるためです。弁済期が到来していても同じです。 【組み合わせ】 正しいのはウとエで、これを組とする (4) が正答です。

出典:2021年(令和3年度) 司法書士試験 午前の部 第17問(法務省 公表)出典元ページ

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