共同相続における遺産分割に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。…
民法 問題35
共同相続における遺産分割に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。
- (1)共同相続人中の特定の1人に相続財産中の不動産の所有権を取得させる一方で当該相続人が老親介護を負担する義務を負う内容の遺産分割協議がなされた場合において、当該相続人が遺産分割協議に定められた介護を行わない場合には、他の共同相続人は債務不履行を理由として遺産分割協議自体を解除することができる。
- (2)被相続人が、相続財産中の特定の銀行預金を共同相続人中の特定の1人に相続させる旨の遺言をしていた場合、当該預金債権の価額が当該相続人の法定相続分の価額を超えるときには、当該預金債権の承継に関する債権譲渡の対抗要件を備えなければ、当該預金債権の承継を第三者に対抗できない。
- (3)共同相続人の1人が、相続開始後遺産分割の前に、被相続人が自宅に保管していた現金を自己のために費消した場合であっても、遺産分割の対象となる財産は、遺産分割時に現存する相続財産のみである。
- (4)共同相続人は、原則としていつでも協議によって遺産の全部または一部の分割をすることができ、協議が調わないときは、家庭裁判所に調停または審判の申立てをすることができるが、相続開始から10年以上放置されていた遺産の分割については、家庭裁判所に対して調停または審判の申立てを行うことができない。
- (5)相続財産中に銀行預金が含まれる場合、当該預金は遺産分割の対象となるから、相続開始後遺産分割の前に、当該預金口座から預金の一部を引き出すためには共同相続人の全員の同意が必要であり、目的、金額のいかんを問わず相続人の1人が単独で行うことは許されない。
正答 (2)
正答は (2)。妥当なのはこれです。
相続による権利の承継は、遺産分割によるものかどうかにかかわらず、法定相続分を超える部分については、対抗要件を備えなければ第三者に対抗することができません(民法899条の2第1項)。特定の預金債権を特定の相続人に相続させる遺言(特定財産承継遺言)も同じで、法定相続分を超える部分を第三者に対抗するには債権譲渡の対抗要件が必要です。なお、承継した相続人が遺言の内容を明らかにして債務者に通知したときは、共同相続人の全員が債務者に通知をしたものとみなされます(同条2項)。
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【ほかの選択肢】
(1) 妥当でない
判例(最判平成元年2月9日)は、共同相続人間で遺産分割協議が成立した場合に、相続人の1人が協議で負担した債務を履行しないときでも、他の相続人は541条によって遺産分割協議を解除することはできないとしました。法的安定性が著しく害されるからです(全員の合意による解除は可能とされています)。
(3) 妥当でない
遺産分割前に遺産に属する財産が処分された場合でも、共同相続人は、その全員の同意により、その財産が遺産分割時に遺産として存在するものとみなすことができます(906条の2第1項)。処分したのが共同相続人の1人であるときは、その者の同意は不要です(同条2項)。
(4) 妥当でない
相続開始の時から10年を経過した後にする遺産分割では、原則として特別受益や寄与分の規定が適用されなくなりますが(904条の3)、遺産分割の協議や、家庭裁判所への調停・審判の申立てができなくなるわけではありません。
(5) 妥当でない
判例(最大決平成28年12月19日)は、預貯金債権は遺産分割の対象となるとしましたが、民法は、各共同相続人が遺産分割前でも、相続開始時の預貯金債権額の3分の1に自己の法定相続分を乗じた額(同一の金融機関ごとに法務省令で定める額(150万円)が上限)まで、単独で払戻しを受けられるとしています(909条の2)。
出典:令和6年度 行政書士試験 問題35(一般財団法人行政書士試験研究センター公表)出典元ページ
この試験問題は、一般財団法人行政書士試験研究センターの許諾を得て掲載しています。無断での転載・複製を禁じます。解説は過去問NAVIが独自に作成したもので、同センターの見解ではありません。
最終更新日
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